[シリーズ] クリパシで行く62回ピースボートの思い出し日記 11 of 22
ではちょっと脱線し、画材紹介です。ほとんど需要はないかもしれませんが、「今度旅行するときはスケッチするぞー」という人は参考にしてください。
出発前から絵を描く気は満々だったのですが、できるだけ荷物を少なくしたいという理由で今回持っていった画材はこれだけです。
スケッチブックはマルマンのSOHO 301というB6くらいの小さくて枚数が多くて安いやつです。ちなみにこれは初めて買ったのですがちょっと失敗したな、と思いました。一枚一枚が意外と簡単に外れてしまうので現場で扱いにくいのです。やはり旅行にはリングタイプの方が向いてるな~と思いました。
ペンケースは100円ショップの布製のものです。筆を入れる関係で長めのものが入るものを探しました。
ペンケースの中身です。
まずは消しゴム。高校時代から愛用のトンボMONOです。これはよく消えます。ただし現場スケッチでは消しゴムはほとんど使いません。書き直した方が早いです。そのためにスケッチブックは枚数の多いものを選びます。ちなみに今回は持っていきませんでしたが僕はふだんは鉛筆もトンボのMONO100を使っています。トンボ好きです。
次は水性顔料マーカー。SAM Color Master Milli の0.5mmというやつです。これは特に理由はなく、PIGMAでもなんでも乾いて耐水性になる水性顔料ならとくにこだわりはありません。ただしいずれにしてもほとんど使いません。
シャープペンシルはパイロットのS10というやつで、0.9mmという太めのものです。芯はBを入れてます。
筆は2本用意しました。書道用の小筆のように見えますが、違います。日本画用の削用筆です。銘柄は忘れましたが、世界堂で一番安いやつ(1本1200円くらい)です。太さは中と大です。削用筆は外側は彩色筆のようにふくよかですが、先端は面相筆のように細く尖っているので(写真では乾いてるのでボサボサですが)、一本で細い線から面塗りまでできるという便利な筆です。なんとこれ1本で漫画を描いているという有名な漫画家もいます。柄はペンケースに入れられるように短く切っています。当初は先端を保護するために購入時についているキャップをつけていましたが、最近は面倒なのでこのままケースに突っ込みます。ほんとは良くないと思います。
もう一本はクレタケの水筆です。たぶん中サイズだったと思います。筆ペンの空インクバージョンみたいなもので、あらかじめ水を入れておいて押しながら使います。あまり使用頻度は高くありませんがイザというときのために必ず持っていきます。
そして肝心のコレです。今回のために購入した固形水彩セットです。ふだんはスチールパレットにクサカベのチューブ水彩絵具を乾かしておいて使うのですが、今回はよりコンパクトにまとめるために、ラウニーの水筒付き12色セットを購入しました。たしか6000円くらいしたと思います。なんとパレット本体が水筒になっていて蓋が筆洗いになっているという便利な製品です。もっとも水はペットボトルで別に持っていることがほとんどなんですけどね。それでも水彩にとって水は命。パレットにも水筆にもたっぷり入っている、という安心感があってこそ創作に集中できるというものです。
で、絵の具の色について。ちょっとしたスケッチには12色あれば十分なんですが、12色の組み合わせは重要です。今回、元々セットで入っていた12色とは違う色を揃えました。×印がセットから外したものです。上の写真でもケースの外に出してありますね。
□チャイニーズホワイト — ×
■レモンイエロー
■カドミウムイエローヒュー
■バーミリオンヒュー
■スカーレットレーキ — ×
■フッカーズグリーン — ×
■サップグリーン
■イエローオーカー
■バーントアンバー
■コバルトブルーヒュー
■ウルトラマリン
■アイボリーブラック — ×
いらない理由は以下のとおり。
□チャイニーズホワイト・・・必要な意味がわからない。普通の12色にこんなもの入れない。実際ラウニーの他のシリーズには入っておらず、これにだけ入っている意図が不明。
■アイボリーブラック・・・同上。
■スカーレットレーキ・・・いわゆる学童用の赤みたいで使いにくそう。混色の関係上もう少しマゼンタ寄りの色に変えたいと思った。
■フッカーズグリーン・・・ちょっと明るすぎる気がした。ビリジャンの方がいいと思った。
そして以下を追加。
■ビリジャン・・・フッカーズグリーンの代わりに入れたけど、ちょと溶けにくく使いにくかった。
■アリザリンクリムゾン・・・スカーレットレーキの代わり。これは正解だった。
■プルシアンブルー・・・これ要るでしょ。バーントアンバーと混ぜて黒を作れるし、重宝。
■パーマネントローズ・・・必要かどうかわからないけどちょっと冒険してみた。ライトレッドとかバーントシェンナとかいろいろ迷った。ちょっと粒子が荒く使いにくかった。要研究。
一応色をつけてみましたが、大体の目安です。実際の色はパソコン上では表現できません。
基本的には入れ替えておいて正解でした。とくに■アリザリンクリムゾンと■プルシアンブルーはよく使いました。■ビリジャンがいまいちだったので、■フッカーズグリーンの代わりは今後は要検討です。アクリルで使って好きになった■フタログリーンブルーとかも試してみたい。■パーマネントローズは結構使いましたが、12色に含めるのはちょっと違うかもしれない、と思いました。
ラウニーの絵の具は初めて使いましたがなかなか良いです(偉そうw)。画材はたいていホルベインとかクサカベとかターナーとか国産ばかり使っているので、 ウインザー&ニュートンとかラウニーのような海外ブランド物なんか「けっ!」って感じだったのですが、いやなかなか捨てたもんじゃないです。安価なアクア ファインシリーズでもこれだということは上のシリーズだとものすごいんじゃないかと想像してしまいます。
それでは、ここからはなぜかこれらの色の使い方について理系的な解説を試みます。眠くなりたい人はぜひ読んでください。そして僕より詳しい人はツッコミよろしく。
まず、色の基本は三原色CMY(■シアン、■マゼンタ、■イエロー)ですね。これにぴったり該当する理想的な顔料が存在しないことが絵画の奥深さの理由の一つではないかと思います。今回の旅行に持っていったパレットでは、■レモンイエロー、■カドミウムイエローヒュー、■バーミリオンヒュー、■アリザリンクリムゾン、■ウルトラマリン、■コバルトブルーヒューの6色を三原色の代用として使用します。ここで「なぜ三原色なのになぜ6色あるのか?」と突っ込んでくれるとありがたいのですが、突っ込んでくれなくても解説します。三原色に近い色を探していると、理想的な色よりは残りの2色のどっちかに寄っている色しかみつかりません。たとえば■Mに近いけどちょっと■C寄りな■アリザリンクリムゾン、■Mに近いけどちょっと■Y寄りな■バーミリオンヒューのような感じです。これはもう仕方ないので三原色のそれぞれの色に近い色を2色ずつ、合計6色用意するのです。この6色で色環をつくるとこうなります。
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ここでは6色で色環を作りましたが、この間を混色しながら埋めていけばいろんな色が出来、綺麗なグラデーションが描けます。つまり最低この6色あれば絵が描けます。赤青黄の3色でいける、と思う人はやってみてください。きっとうまくいかないでしょう。でもこの6色ならかなりいけます。
ちょっと即席ですが、水筆でちょちょっと描いてみました。
そしてここからが重要なんですが、混色はこの順序どおりでなく、各CMYの2色を反転させることでバリエーションを作れます。例えば、■緑は上の色環の順序だと■+■で作ることになりますが、他にも■+■、■+■、■+■でも作ることができます。これで■緑の混色パターンが4つあることになります。もちろんそれぞれ違った■緑色ができあがります。ちなみに4パターンというのは4色ではありません。■+■だけでも比率を変えれば■黄緑も■青緑も作れます。ということは■黄緑や■青緑の作り方が4パターンあるわけです。同様に■オレンジ系、■紫系にも4パターンがあります。これだけでものすごい混色のパターンがあります。
ところがこれだけの組み合わせがあっても、作れない色はたくさんあります。とくに人間の目は緑の違いに敏感なので、上記の組み合わせ程度では思ったような緑がなかなか作れません。そこで今回のパレットでは■ビリジャンと■サップグリーンという自然の中にある緑に近い色を足して補強しています。これで■黄緑にはさらに■+■、■+■、■+■、■+■の混色パターンでも作れるようになるので合計8つの混色パターンがあることになります。
そしてこの8色に加えて■Yの代用として■イエローオーカーを用意してあります。これは俗に言う黄土色です。ぱっと見はちょっと暗い色ですが透明水彩ではほぼ黄色として使えます。また■Cの代用として■プルシアンブルー、■Mの代用として■パーマネントローズもあります。これらは混色時にちょっと暗めにしたいときに使います。たとえば暗い黄緑色は・・・もう説明は省略していいですね。要するにたった12色でも混色パターンはものすごく多く、出せる色は無限にあるんです。
ちなみに余段ですが、小学校や中学校の授業で「■黄色と■青を混ぜると■緑になる」と習ったと思います。でも学童用絵の具では■黄色と■青をまぜても実際にはぜんぜん■緑にはなりません。これを実感したときに「大人は嘘つきだー」と思ったか「世の中理屈通りにはいかないんだなー」と思ったかでその子供の将来が決まるのではないかと考えています。・・・という冗談はおいといて、この時なぜ緑にならないかというと、学童用絵の具の■黄色は■レモンイエローと■カドミウムイエローの中間のような色、■青は■ウルトラマリンと■コバルトブルーの中間のような色です。なので■レモンイエローと■コバルトブルーを混ぜたときのようないい緑色にはならないんです。もちろん良い顔料を使っていないから混色してもいい色にならない、という理由も大きいですが。
それからほんとは■カドミウムイエローヒュー、■バーミリオンヒュー、■コバルトブルーヒューのようなヒューはやめたいです。これらは混色してつくられたなんちゃってカラーなので混色すると美しくないです。いつか入れ替える予定です。
そういうわけで12色と色数が少ないからこそ色選びは重要です。そして色選びは楽しいです。絵を描くより楽しいかもしれませんw 画材屋に行ったら絵の具コーナーを眺めて見てください。
長々と書いてしまいましたが、最後まで呼んでくれた人ありがとう。