上村松園展に行ってきた

上村松園展に行ってきました。

俺はもともと日本画に明るくなくて日本画の文脈というのが全く読めません。その上事前の下調べもとくにしておらず(どの時代の画家なのかもよく知らずw)に飛び込んだわけですが、自分の文脈の上での理解だけでもなかなか楽しめた展覧会でした。

以後、俺の勝手な解釈で感想を述べるわけですが、上記説明のとおり俺の文脈でしか理解していないので「それ全然違えよw」って場合は笑っておゆるしを。

上村松園が生きた時代は明治~昭和。今回の展覧会はおおむね制作年代順になっているようで、ざっと眺めるだけで松園の作風の変遷がわかります。筆のタッチや顔の輪郭、目の描き方などはすこしずつ変化しているのですが特筆するほどのものはありません。作風に変化があるのは構図。これはこの展覧会に展示されているものを見る限りでは、徐々にというよりは唐突に変化しています。

初期の作品は写実的で、そのフレームに入っているものはだいたい描かれています。たとえば「虫の音(作品18)」という絵では、手前に咲いている花からすだれに透けて見える室内には畳の目までがきっちりと描かれています。女性が手で開いているすだれの曲線にはリアリティがあり、実際すだれはそのように開いただろうということが想像できます。

昭和に入ってからの作品になると、フレーミングの時点でかなり整理されていますし、描かれる対象もかなり限定され、省略されているものは全く描かれず重要なものが強調されています。たとえば「新蛍(作品74)」は「虫の音」のすだれの女性の部分だけを取り出したような絵ですが、手前の花などはありませんし畳も見えません。すだれと女性だけが描かれています。すだれの曲線も実際にそうであったような曲線ではなく「こうあるべき」デザインされた曲線に感じます。そもそもその絵そのものが実際の場面を切り取ったというよりは人物の配置やすだれの面積などがきっちり計算されたように見えます。

この違いは何なのかを考えてみます。昭和期の作品は前述のように「よりデザインされた」ように感じるのですが、ではリアリティがないかというとむしろ初期よりもリアルに感じるところがあります。その変化はおそらく視点です。写真になぞらえると、初期の作品が広角レンズで俯瞰的に全体像を撮影した写真だとすれば、昭和期の作品は標準か中望遠レンズで目的の被写体のおいしい部分を(しかも黄金分割なども駆使した科学的な手法で)切り取った写真です。

もしかするとこの変化の前後に松園は西洋絵画や写真に出会ったのではないでしょうか。写実を重視していた西洋絵画は写真の登場によって大きく変化ていきますが、日本画にもまた日本画なりの写実性というものがあり、西洋絵画や写真の輸入により変化していったのだと感じました。ただし西洋絵画は写真との差別化のために抽象化していきますが、松園の作品は描かれるものは架空化しつつもフレーミングとしては写真の手法を導入していったように感じます。単に「影響されて真似た」のでもなければ「否定あるいは住み分けとして離れていった」のでもない、「新しい文化との格闘」が見え隠れします。この理解は完全に想像なので当っているかはわかりません。しかしある時期までの日本では西洋絵画と写真は区別されていなかったと言いますし、そのどちらかの影響で作風が変化したのだろうということは想像に難くありません。

この展覧会でさらに興味を持ったのは、写生の展示です。完成された作品そのものには着物を着た古風な女性ばかりが登場するわけですが、実際に松園が生きた時代はすでに洋服が少しずつ普及しはじめる時代。モデルがそこらにたくさんいるわけもなく「死滅しつつある日本文化」の名残を芸者などに求め必死にスケッチしている様子がうかがえます。この中で気になるのが「長刀を使用する女性(作品S11)」。制作年不詳とされているのですが展示上は写生コーナーの中の一番最初になっています。この絵だけはほかのスケッチと違って、西洋画家のクロッキー帳ではないかと思うほど正確なデッサンで描かれています。この絵がもし展示順どおりに他のスケッチよりも前に描かれたものだとすると、松園はこの西洋絵画的画力がありながらあえて平面的な日本画を描いていたというピカソ的な位置にいたことになります。もしそうではなく後の時代に描かれたものだとすると、前述の「どこかの時期に西洋絵画の影響を受けて作風が変化したのではないか」という俺の想像をさらに裏づけることになります。どちらにしても面白いことです。

最後に、今回この展示を見ながら感想をツイッター上でツイートする試みを考えていたのですが、残念ながら美術館内はほとんどが圏外で、ルール上も「携帯電話のご使用はお控えください」となっており実現しませんでした。絵画の目の前でその感動をツイートする、というのは現代の美術観賞のあり方としてはとても正しいことだと思うのですが、美術館側がそのことに理解を示してくれる日は来るのでしょうか?

カテゴリ: アート/お絵描き 日付:
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