ボーランド・デベロッパーズ・キャンプに行ってきました。

今日はボーランド・デベロッパズ・キャンプなるものに行ってきました。AUTLA(あうとら)の開発でも、そして仕事でもこのボーランドのソフトをこれまで使ってきましたが、今年の春に開発ツール事業を売却するというニュースが飛び込み、どうなることかと心配していました。今回のイベントの主旨はユーザを安心させることにあったのではないかと思います。正式には「第一回ボーランド・デベロッパズ・キャンプ」というイベント名なんですが、「第一回っていうか、もうボーランドじゃなくなるんでしょ?」というツッコミを軽くしておいて、このイベントがどういう内容だったか紹介していきます。


●第一部

最初に八重樫さんという人が出てきました。おそらく分割後の日本法人の代表格の人ではないかと思います。「分割についてはあまりみなさんにお話しできることはありません」と連発しつつ、でも「わたしもこれまで他の会社でこういったことは何度も経験しました・・・」と分割/売却話を延々とつづけられました。ようするによくあることで時間もかかって大変ですがみなさんは心配いりません、ということのようです。余計心配になりましたが。

次にマルコムさん。この人が今日のメインのスピーカーで、アジア太平洋地域のディレクターだそうです。ボーランドには8年ほど在籍しており(資料によると16年以上となっている)、すでにDevCo(分割後の新会社のコードネーム)への移籍が決まっているそうです。「ボーランドにはこれまで(なんと言ってたか忘れた)メインの事業と開発ツール事業があって、ここ数年は開発ツール事業はあまり重要視されていなかった。だから今回の分割化はすばらしいんだ、世界中の著名な人たちが支持してるよ。たとえば・・・」とこれからの見通しが明るいことを強調。ただし著名な人たちを紹介されても全くわかりませんでした。わかったのは「Mastering Delphi」の著者くらいです。

その後、今後の開発ツールのロードマップが紹介されました。以下内容抜粋です。

・Delphi(というかBDS)について

1)現在のバージョンはBDS2006です。すでに500以上の修正を行ったアップデート2をリリースしていますが、日本語版は今朝完成しました。さらに200以上の日本語特有のバグを修正しています。数日でダウンロードできますのでお楽しみに。

2)Highlanderというコード名で呼ばれている次期バージョンが年末にリリースされます。これはおそらくBDS2007と呼ばれるでしょう。.NET2.0のサポートとECO IVへの対応などが目玉です。

3)Delphi for Vistaも2007年にはリリースします。AvalonとIndigoをサポートしますし、VCL for Win32もサポートします。このプロジェクトは遅れ気味です。

4)その後Delphi/C++ for Win64をリリースします。これはWin64とWin32にネイティブ対応したものです。for Vistaが遅れ気味なので結果的には同じ頃のリリースになるのではないかと思います。
ここでDelphi for Vistaと Delphi(BDS)2007 が別物というのがよくわからないところです。Windows Vistaはさらに遅れて来年半ば頃にリリースではないかと思いますので、それに合わせて後ろにずらしたというところでしょうか。MSとの連携の都合上という気がします。また、それとfor 64との関連性もわかりません。DelphiとC++BuilderとC#Builderと統合してBDSにしたのに、今度はfor Vista for 64 と分けていくのでしょうか?

・JBuilderについて

1)JBuilderはver1~3はDelphi製のフレームワークを使用していました。3.5~2006ではPrimetimeを使用していました。そしてこれからはEclipseを使用します。フレームワークが何であろうとJBuilderはJBuilderなのです。

2)市場のニーズが変化してきている。初期(Delphi期)はJDK、Swing、AWTを扱えることが要求され、その後(Primetime期)はJ2EEが求められてきました。そして今はOpenSourceフレームワークが求められているのです。

3)現在のバージョンはJBuilder2006です。アップデートもリリースします。

4)年内にJ2SE6に対応したJBuilder2007をリリースします。

5)JBuilderについては後ほど詳しくお話しします。

・InterBaseについて

1)DevCoの話をするときに、InterBaseは忘れられがちですが、一応お話ししておきます。

2)6月~7月ごろにInterBase8.0をリリースします。年内には8.5、来年Q3頃には9をリリースしたいと思っていますが、先のことなのでまだわかりません。

第1部はここで終了。最後のメッセージとして、「これまでのボーランドは、1ヶ月前になるまで新しいバージョンのことを話さなかったし、ユーザーは先が見えなかった。が、私たちは変わった。このように3年先までのビジョンを示せる。3年後にはまたさらに3年先の話ができるよ」と語って締めくくられた。

●第二部

休憩の後、各ツールの次期バージョンの紹介がおこなわれました。

・JBuilder Peloton

これが今日のメインです。Eclipseベースへの変更という大きな転換点となるだけに、僕もかなり興味を惹かれる内容でした。第一部では「フレームワークの変更は初めてではない。DelphiからPrimetimeに変わったときと同じように今回も問題ない」という説明でうまく切り抜けました(実際これは言い訳臭いというかこじつけだと思いました。DelphiからPureJavaに変わったときと今回では状況が全く違います)が、その詳細はどんなもんでしょう?

1)詳しいロードマップ。毎年末のバージョンアップと年2回のアップデート提供がサイクルとなることが示されました。これには2008年末のJBuilder2009までが書かれていました。

2)市場のニーズの再説明。「J2EEはもちろん今後もサポートするが、今求められてるのはオープンソースのフレームワークの活用であるからそれが今回の目玉である」とオープンソースとの連携が強調されました。ここで面白いなと思ったのは、オープンソースツール同士の連携をDevCoがサポートする、という点です。つまりDevCoが提供するのは複数のオープンソースツールを組み合わせるときの煩雑さを取り除くこと、ということです。マルコム氏の言葉で言うと「それぞれのツールをこまごまとアップデートし設定ファイルを書き換えるという煩雑な作業はJBuilderが勝手にやってくれる」と。(推測になりますが)おそらくDevCoのビジネスモデルは開発の効率化を有償サポートする、という方法になると思います。といっても単純に想像できるソフトウェアのカスタマーサポートではなく(当然それもあると思いますが)、オープンソースツール同士の互換性や相性などを確認し、できるだけ最新のバージョンであり且つ安定動作が見込めると思われる組み合わせをJBuilderに同梱し半自動的に環境を構築する、それを手作業でやるよりはJBuilderを購入した方が結果的に安くつくから商売になる、というものでしょう。実際これまでもtomcatやStrutsが同梱されていて簡単にデバッグできるなどの機能はありましたが、Eclipseプラグインが使えるとなればさらに強力になります。そして様々なレイヤーや機能が別々のOSSとして公開されている現状で推奨される組み合わせがあらかじめ用意されているというのは確かに便利ではあると思います。しかし逆に不安もあります。これまでもJBuilderに同梱されているバージョンよりも新しいものを使いたい場合困ったことになる、という事態がときどきありました。それはJBuilderの開発よりオープンソースの開発の方が早いためおこる現象です。最新のJDKへの対応が追いついていないのも同じ理由です。そしてまさにそれを解決するために、毎年のバージョンアップと年2回のアップデートが用意されているのではないかと思います。アップデートは必ずしもバグフィックスを意味しません。合計年3回のアップデートで最新のオープンソースプロジェクトの成果(と最新のJDK)を取り込みつづける。年一回は有償、それ以外は無償。より新しいツールを使いたければバージョンアップしろ、と。年3回なら実質リアルタイムに最新を追いかけ続けるのと実質同じ事になると思います。オープンソースを利用したビジネスモデルとしてDevCoが考えているのはだいたいこんなところじゃないでしょうか。

3)Eclipse版JBuilder(コードネームPeloton)のデモが行われました。10分弱の短いものでしたが、大体感じはつかめました。印象としては

・見た目はEclipseそのまま。
・機能的にはJBuilderにEclipseエンジンを埋め込んだのではなく、EclipseにJBuilderをプラグインした感じ。

でした。デモでは既存のメモ帳チュートリアルとwebプロジェクトの*.jpxをPelotonに読み込んでデバッグ/実行するという操作が行われました。旧JBuilderのjpxプロジェクトはEclipseプロジェクトにインポートという形をとるようです。互換性については「100%を目指します」との事なので期待したいと思います。気になったのはGUIビルダに関しては全くふれられなかったことです。実際にJava開発をやっている人でGUIアプリを作っている人は少数でしょうが、GUIアプリであろうとなかろうとRADで開発効率はアップする、というボーランドの持論があるのだから、PelotonにもJBuilder由来の強力なGUIビルダ/モデリングツールが用意されているのではないかと期待したいのですが、そこが全く見れなかったのは残念です。もしGUIビルダがグレードダウンしているのならPelotonが出る前に旧版最終版であるJBuilder2006が欲しいな、と思った今日この頃です。あと、これまでPureJavaであったJBuilderがOS依存のEclipseベースになるとWindowsでしか安定動作しないのではないかという不安もありますが、これについても全く言及はありませんでした。

・BDSに搭載されたECOの概要

何やらこれからの開発はコーディングを減らせる、というメッセージのもといろいろと説明されました。ECOそのものもこれまで全く知らなかったので勉強にはなりましたが、結局.NETの話らしいので興味はそんなに引かれませんでした。よって省略。

●第三部

Delphiでの開発技法のセッションでしたが、初心者向けでいまさらっぽかったので早々に退出。退出間際に昔一緒に仕事をしていた人に数年ぶりに遭遇し挨拶を交わして帰路につきました。

全体的な感想としては、思ったほど状況は悲観的じゃない。とくにスピーカーたちがわりとラフな格好ででてくるところを見ると開発ツールメインだった時代のボーランドのにおいがしていました。一旦ボーランドを去った人たちもDevCoで再合流するようですし(まさかフィリップ・カーンが戻ってくるってことはないでしょうが・・・)面白くなるかも知れません。今後の動向にチェックでしょう。どこに買収されるか、が問題ですが。MSでないことを祈ります。

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