横浜美術館のドガ展を見てきました。
場所が横浜ということもあってなかなか行くチャンスがなかったんですが、今日予定があいたので急遽行ってきました。
朝、開場してわりとすぐに入場したので、中なそれほど混んでおらず。いつもの調子でまずはザザッと見て気に入った作品をじっくり観るというスタイルで。
一番人気の「エトワール」は後半にあるため、まだその時間には辿り着いてる人は少なく(と言っても10人ぐらいはいた)、わりとゆっくりと見ることができました。この絵はこの展覧会のポスターや会場の装飾などでかなり大伸ばしにして使われているのですが、その原画とは思えない小さな絵(F8くらい?)でした。通常はもっと大きな絵でなければ通常あそこまでの拡大に耐えられないのですが、この「エトワール」はかなり緻密に描かれていて、1メートルまで近づかないとパステルの筆跡が見えないほどです。こんな緻密な画をパステルで描けるのか、と驚くばかりです。しかしこの絵を画集などで見る度に感じていた「右足のデッサンおかしくない?」という疑問は実物を見ても消えることはありませんでした。
そもそも、今回の展示を見て思ったんですが、ドガはあまりデッサンは上手ではないようですね。このエトワールは良く描けている方ですが、時代を経るごとに上手くなるわけでもなく、これ以降に描いた画でも結構酷い(あくまでデッサン的にです)作品もあり、完成度のかなりバラツキのある画家だと感じました。クロッキーや習作を見てもなかなか線が決まらない様子が見てとれます。絵の具はパステルがコテコテになっている作品はデッサンが正しい傾向にあるので、きっと油彩にしろパステルにしろ下絵の時点ではイマイチなものを、上から何度も修正してあの完成度に仕上げているのでしょう。
ドガと言えば「踊り子」シリーズと「湯浴み」シリーズが有名(というかそれしか知らなかった)なわけですが、今回良いなと思ったのは風景画です。わずか数点しかない風景画ですが気に入ったのは「小屋へ帰る牛の群れ」という作品。なんでもない夕暮れの村の風景なのですが、輪郭のボケた印象派らしさと後期印象派のような黄色~褐色系の色使いでなんとも落ちつく絵です。
他に印象に残っているのは、まずは最初の方に展示されている「木陰で死んでいるキツネ」。寝ているのか死んでいるのかはタイトルを見ないとわからないのですが、サクっと描かれた背景の森とキッチリと描かれたキツネの対比が面白い作品でした。それからスクエアなパステル画「草上の二人の浴女」。これは湯浴みシリーズと違って屋外の明るい作品で、あまり立体感がなく輪郭線が見えているという、セザンヌやゴーギャンに通じる今風な感じがあります。最後に展示も最後の方にある「控室の踊り子たち」。いわゆる踊り子シリーズとはちょっと違った絵で、踊り子にだけ黒の縁取りがあるのが新鮮でした。
個別の作品として印象に残ったのはそんな感じですが、全体的に気付いたことをいくつか。
ドガと言えばパステル画ですが、以前から気になっていたのがどういう紙を使っているのかということ。今回いくつかのパステル画の縁や塗り残し部分を観察してわかったのは、凹凸のあるいわゆるパステル画用紙ではなく、普通の色画用紙のような表面がザラついているが凹凸のない紙でした。厚さはわかりませんが展示されてる状態でも多少波打ってるのでおそらく厚手と言ってもせいぜいケント氏くらいのものではないかと想像します。パステル画は通常白い紙を使わないのですが、今回展示されているパステル画は見たところほとんどが黄土色のようでした。全ての作品が同じ紙というわけでもないですが、作品ごとに紙の色を使いわけているわけでもなさそうです。
あと特徴として照り返しの光がかなり強調されている(それゆえ不気味)のは前から気付いていましたが、それだけじゃなくてちょっと光の描き方にクセがあると思いました。それが何なのかはうまく説明できませんが…。暗部が緑系な作品が多いのも特徴でしょうか。
横浜美術館は2度目でしたがそんなに広い美術館ではないですね。朝イチで空いていたのもあるかもしれませんが、ゆっくり見ても1時間半ほどで見ることができました。
で、帰ってから勢いで「湯浴みする女」をパステルで模写してみたのですが、なかなかうまくいきませんでした。ドガはおそらくハードパステルだと思いますが俺が使ったのはオイルパステル。オイルパステルは小学生が使うサクラクレパスの高品質版みたいなものなので、専門的な技術を身につけなくてもある程度もなんとか描けるので便利です。
そんな感じの日曜日でした。