[シリーズ] クリパシで行く62回ピースボートの思い出し日記 9 of 22
(前回までのあらすじ)
アカバ港に降り立った僕は、ボート乗り場で水浴びする親子に出会った。その親子とのつかの間の交流ののち、市街地に向かって歩きはじめるが・・・。
アカバ周辺の沿岸には段々畑が続いています。一つ一つの畑は小さく、灌漑設備も手作り風でこころもとないのですが、作物は青々と茂っています。用水が整備この辺の土が農業に適しているようには見えないんですが、農作物をつくるにはこういう方法しかないのでしょう。
土手を上がる階段からその畑をスナップしていると、遠くから声を上げて人が歩いてきました。「勝手に撮影するな」とか何とか言っているのかと思ったらどうやらそうでもないようで、あれこれ話しかけて来ます。ただしアラビア語のためさっぱり分かりません。以下おそらくそういうことを言っているんだろうという想像です。
「ここら辺の畑は俺が一人で耕したんだ。」
「この溝はこう続いてて、水があっちに流れるようになってるんだよ。」
「ここに座るから写真撮ってくれ。」
「そうそう、そんなところにいないでこっちに降りてこいよ、さぁさぁ。」
「ほら、ここを見てくれ。ここを塞いでこうすると、ほら、こっちに水が入ってくるだろ?すごいだろ」
「この仕組みも俺が作ったんだよ」
彼の畑自慢が一段落したところで、ここで作っている作物について聞いてみようと思ったんですが・・。
「これは何ですか?」
「ああ、これを食べたいのかい?ほら取ってあげるよ。さあどうぞ。食べてみな。こうやって・・・。」
全く話がかみ合ってないまま、2束ほどの作物を手渡されました。彼はむしゃむしゃと食べながら「さあ食え!」と勧めるので仕方なく食べてみました。それはほうれん草か小松菜のような野菜で、調理すればおいしいかもしれませんが生でかじるにはちょっと向いていない味でした。
「おお、ちょっと暑いな。あっちで休憩しよう。」
畑の奥にあるヤシの木陰に案内されると、そこには御座のような布が敷かれていました。そこが休憩所なのか彼の家なのかはわかりませんが、とにかく「そこに座れ」と言っているようです。しかしちょっと汚すぎて座る気にならないし話しても全く会話が成立しなくなってきたのでそろそろ帰ります、と言って別れました。
もらった2束の野菜は、このまま持って帰っても仕方ないし、街まで持っていくのも邪魔なので、もったいないけれどちょっと離れたところに捨ててしまいました。ごめんなさい。
そこから10分ほど歩くとアカバ市街に到着。しかし買い物をする予定もないので、ベンチに座って再びスケッチを始めました。
ここで絵を描くということについて経験のない人もいると思うので若干解説。僕の場合「たまに描く」程度なのでしばらく描いてないと平気で半年や1年くらいのブランクが開きます。そうなると簡単には絵が安定しません。勘を取り戻す、というか手と目と脳がうまくリンクしてさらさらとイメージ通りに描けるようになるまでには数枚の失敗作を描かなければなりません。その失敗作というのはたいてい細かく書き込み過ぎていたり気に入らないから修正したりとあとで見ると悲惨な状態になっています。そういうわけでこのアカバでは5~6枚の鉛筆スケッチ+3枚の水彩スケッチを踏み台にして勘を取り戻していきました。そしてここでお見せできる絵はありませんw
気がついたら手の甲がヒリヒリします。そうです。スケッチにあまりにも熱中してしまい両手と首が日焼けで真っ赤になっています。ちょっと日陰に入らないと、と思い街中をぶらぶらして手頃なお店で休憩。名前はわかりませんがサンドイッチ風の料理を食べました。
街は特に見るものもないので、元来た道をちょっと迂回しながら港に向かいました。
帰る途中でもう一枚スケッチしたのが上の絵です。やはり絵を描く行為自体がめずらしいのか、描いている途中には何度か通る人に声をかけられました。
そんなこんなで数時間の陸上行動は終了。港のゲートでバスを待っていると、同じくバス街の方と知り合いになり、なかなかこないので一緒に船まで歩いて戻りました。
夜、ちょっと時間ができたので岸壁で船を撮影。この数時間後、出航しました。
次回はポートサイドです。